こっちでも同じことができるか、テストしてみよう。

酒類販売免許規制のアップデイトでございます。

はじめて出会う政治学―フリー・ライダーを超えて (有斐閣アルマ)

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第1章の酒類販売免許の規制について、人口基準が2003年に廃止されるかどうかもわからない、と書きました。では、その後どうなったのでしょうか。たしかに、人口基準は2003年9月に廃止になりました。しかし議員立法により、2003年4月、「酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法」が制定されたのです。これによって、緊急調整地域が設定され、全国3,383地域(原則:市区町村単位)のうち922地域が設定され、この地域内では1年間新規出店ができないこととなりました。

この後、2004年には指定の対象地域が拡大し、1,274地域(全地域の37.7%)となりました。さらに2005年8月にはこの地域指定が延長されることになり、2006年8月31日までの間、なおその効力を有するものとされたのです。

この1,274地域とはどのような規模かということを兵庫県でみると、神戸市では長田区と垂水区のみ、西宮市、芦屋市、伊丹市川西市は入っていますが、宝塚市尼崎市は指定されていません。これらの2市では、人口基準も廃止されていますが、西宮市などでは、規制が続いていることになり、この緊急調整地域は「逆特区」とも呼ばれているのです。

興味深いのは、少なくとも2005年の延長は、自民党公明党議員立法で同法の改正案を衆院に提出し、全会一致で延長が決まったことです。全政党ともこの規制には賛成しているのです。

実に鉄の三角同盟は強し!というところです。いわゆる「小泉市場原理主義」はここには見えないのですね。また、どうしてある市町村区は指定され、あるところは指定されていないのか、これも次に面白い問題です。

ではどういう地域が緊急調整地域に指定されるのか、という酒類販売免許の規制緩和の話です。

その指定要件の概要は次のとおりです。(平成16免許年度)

税務署長は次の1から3までをすべて満たす地域を緊急調整地域に指定することができるとされています。

1)その地域において酒類の需要に対してその供給能力が著しく過剰であること
 具体的には、その小売販売地域において平成12年度から平成15年度までの間に酒類小売業免許の新規付与等が行われており、かつ、その小売販売地域の平成15年度の平均小売販売数量を、平成12年度から平成14年度の各年度の平均小売販売数量の平均値で除した割合が、100分の90以下であることをいいます。

2)その地域に存する酒類小売販売場のうちに酒類の販売数量の減少が著しいこと等により酒類の販売業の継続が困難な酒類小売販売場が占める割合が著しく高いこと
 具体的には、平成15年度の小売販売数量を平成12年度から平成14年度の小売販売数量の平均値で除した割合が100分の90以下である酒類小売販売場の数を、平成16年3月31日現在でその小売販売地域に所在する酒類小売販売場の数で除した割合が、2分の1を超えることをいいます。

3)その地域に存する酒類小売販売場の過半数酒類小売業者から、経営改善計画が提出されていること

1年目から2年目はこの用件にあたる地域が増え、2年目からは単純に同数の地域が延長された、と見るのがよいようですね。

これによると、指定はいちおう機械的なようです。たとえば、東京の区議会議員(共産党)が、城東地区は十四年度の地区全体の販売量が前年に比べ2割も落ち込んだのに、一割以上落ち込んだ店が過半数というもうひとつの指定用件を越えられず適用除外となり、残念だ、というふうにレポートしています。そこで、「緊急地域指定の要件緩和と期間延長を求めるべきだ」と指摘したりしているようですね。