国から地方への財政移転と集権・分権、融合・分離

 村上佑介・橋野晶寛『教育政策・行政の考え方』「例えば国からの財政移転が大きくなることは、自治体の自律的な意思決定に影響を及ぼさないのであれば集権化とは言い難く、むしろ融合化ということが適切であるが、現実には集権と融合とは混同されて論じられることが多い。」p.185 
 Tulia Falletiの著作でも、中央政府からの移転支出の増大、地方税の創設、国税の税源移を財政的分権化と位置づけており、最近の拙稿ではよく引用している。
 戦前期の、義務教育費国庫負担金の創設なども、それまでは地方が自分で支出していたものを、国(や都道府県)が出すようになったことを集権化というのは難しいと思う。もちろん、補助金を出すことによって、国がいろいろ口を出す、関与するということはある話で、それはそれとしてよく検討する必要はあるけれど。
 1940年の義務教育費国庫負担法と地方分与税について、神野直彦は、「中央政府が地方政府へ委任事務に関して負担を負うという理念が公認された」(神野,1990, 237ページ)とし、井手英策が「地方自治体を公共サービスの供給主体として位置づけつつ、国がそのために必要な財源を保障する仕組みを導入した」と位置づけている(井手2012、68 - 69 ページ)のは興味深い。